鹿児島大学には、9つの学部があり、学部生・大学院生合わせて約1万人の学生が、日々学んでいます。

 

そしてその中には、自分の「知りたいこと」「興味のあること」をより専門的に、熱心に研究している学生がいます。

 

KADAI INFOは、そのような鹿大生を代表して9人にインタビューを行い、各学部の学部生・院生がどのような研究をしているのか取材させていただきました。

 

第一弾のこちらの記事では、

 

法文学部人文学科卒業生 鳥丸葵さん

理工学研究科物理・宇宙プログラム院新1年 赤峰恭太郎さん

共同獣医学部獣医学科新6年 廣岡夏実さん

 

のインタビューをご紹介します。

 

『ゾンビランドサガ』から見る現代社会の「生」の変容

法文学部人文学科 令和2年度卒業生

鳥丸葵さん

Q. 研究の概要を教えてください

 『ゾンビランドサガ』(2018)という「アイドル×ゾンビ×佐賀」をテーマとしたアニメ作品を研究対象とし、本作品が「流動化」する現代社会への「生きづらさ」を訴え、今後どのような生き方が必要となるのかを描いていることを明らかにします。

Q.生きづらさとは?

本作品の主人公は、何事にも努力し着実に力を身につけていたのに、それを発揮できないまま死んでしまい、記憶を失った状態でゾンビと化します。現代社会においても、個人主義・成果主義の考えが広がった一方で、自己責任が求められるようになり一人一人の自立や努力が当たり前になっています。しかし、個人の努力には限界があり、必ずしも報われるわけでもないので、精神的に追い詰められてしまう場合もあります。さくらの死やゾンビ化、記憶喪失はそうした社会の現状を反映、批判していると考えます。

Q.なぜその研究を?

元々アニメ好きなのですが、特に好きなアニメ作品が“アイドル”を題材にしたものでした。先生から面談で『ゾンビランドサガ』が面白いよと勧められ、試しに1話観てみたら「アイドル」以外にも「佐賀」「ゾンビ」といった今までのアイドルアニメにはない要素がありとても面白かったので、研究することにしました。

Q.研究の面白さ・役に立つ点は?

自分の好きなものを研究できるということが面白かったです。ただ、アニメや漫画などのポピュラーカルチャーを単に「好きだから」という理由だけで研究すると、主観的な内容になってしまったり、学問的なテーマにならなかったりする恐れがあります。そうならないためには、一見関係ないような文献なども幅広く読んで、客観的知識を身に付ける必要があるので、研究を通して得た文献調査力などは今後も役に立つかなと思っています!


 研究で使用した文献の一部

Q.大変だったことは?

研究発表を行う時は毎回準備に苦労しました。内容を要約したレジュメとパワポの資料を作る必要があり、それに合わせて原稿(カンペ)も用意していました。限られた時間の中で、作品を一度も観たことがない人にも理解できるように資料を作るのは非常に難しいですが、発表後に「分かりやすかった」「資料が見やすかった」などの感想を頂けると嬉しかったです。

 鳥丸さんの研究メモ

行き詰ったときのリフレッシュ方法は?

犬を飼っているので、疲れた時は犬を撫で回したり写真を撮ったりして癒されてます(笑)

 

近赤外線天体観測用InGaAs検出器の分光感度特性の評価

理工学研究科物理・宇宙プログラム院 新1年

赤峰恭太郎さん

 

Q.研究の概要を教えてください

 天体からの赤外線を電気信号に変換するための重要なデバイスである「赤外線検出器」を評価しています。この検出器の「感度(どのくらい弱い赤外線を検出できるか)」が波長ごとにどうなるか、また、低温環境下でどう変わるかを調べています。

Q.なぜその研究を?

 私の所属する研究室では、自分たちで天体観測装置を開発し、口径1mの望遠鏡に取り付けて観測を行っています。私自身、3年生の時から装置作りをしていました。4年生になると、先生と相談の上、それまでやっていた内容に近いテーマである「検出器の性能評価」に取り組むことになりました。

Q.研究の面白さ・役に立つ点は?

 検出器の感度が良くなると、より暗い天体の観測や、逆に明るい天体では高速撮影が可能になるなど、天文学研究の幅が広がります。 検出器の感度を測定するための装置は売られていないので、自分で作っています。完成した装置が正しく動いているかを調べるのはとても難しいですが、自分で作った装置がおもしろいデータを見せてくれるとやっぱり嬉しいです。

 開発した測定システム

Q.頑張ったことは?

 微弱な光を検出するためには、さまざまなノイズを減らす必要があります。ノイズの発生源は、装置を動かすための電源由来のものや、室内を飛び交う電波など様々です。これらのノイズの原因を探り、1つずつ潰していく作業を一番頑張りました。 その際には、-200℃の低温環境を作る必要があるのですが、私たちは「真空冷却容器」という容器を使っています。単に冷やすだけではなく、外部から熱が入らないための工夫がされています。

真空冷却容器の内部

Q.行き詰ったときのリフレッシュ方法は?

 郡元キャンパスには緑豊かな植物園があります。研究がうまくいかない時は、この植物園内を散策していると、頭がすっきりして落ち着きます!

 

ネコカリシウイルスの野外株の調査と既存のワクチンの有効性

 

●共同獣医学部獣医学科 新6年

廣岡夏実さん

Q.研究の概要を教えてください

飼い猫に蔓延しているウイルスであるネコカリシウイルス分離・培養し、そのウイルスが現存するワクチンで中和できるか調査しています。また、ネコカリシウイルスの系統樹を作成し、変異株の有無も調べています。

Q.研究の面白さ・役に立つ点は?

 ネコカリシウイルスが猫にどんな影響をもたらすのか、また、このウイルス自体がどれくらい変異しているのか知る事が面白いです。それだけでなく、今の日本でどういったウイルス株が流行しているのか知る事ができ、それがこれからのネコカリシウイルスとの付き合い方を考える発端となるという点で非常に役に立つと考えています。

Q.大変だったことは?

 実験がうまくいかない時、何故上手くいかなかったか考えても、ネコカリシウイルス研究自体のしっかりした文献が無いため、1つ1つ地道に自分で考えてやってみるしかないことが多かったことです。また、実験系も確立されていないものが多いので、研究が進んでいる他のウイルスの実験系を見つけて、ネコカリシウイルスに応用して頑張りました。

 ウイルス実験の細胞培養のプレート

Q.行き詰ったときのリフレッシュ方法は?

Yahoo!ニュースをみたり、動画をみたりして気分を紛らわせています!

 

(2021年3月取材)

 

取材にご協力くださった、鳥丸さん、赤峰さん、廣岡さんありがとうございました

 

第二弾では、農林水産学研究科修士2年 きりこさん、歯学部歯学科卒業生 前田曜さん、水産学部水産学科4年 藤田恭平さんのインタビューをご紹介します。

記事はこちら↑(※4月14日更新)

 

★また、4月発行のKADAI INFO第4弾フリーペーパーでは、今回取材した9人の研究紹介をぎゅぎゅっとまとめて掲載中!4月20日頃から鹿児島大学学習交流プラザ内に設置予定ですので、ぜひそちらもチェックしてみてください!

 

 

 

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