2023.02.28(Mon)

text: NEJI

 

ジェンダー学は私の身を守る「盾」

 

社会的な性差にとらわれない「ジェンダー学」を専攻したのは大学3年生のころ。きっかけは高校生のときに遭った痴漢の被害だった。

「服装や態度が原因だったのでは」―。知人から心ない言葉をかけられ、「被害に遭った原因は私」と自分を責め続けた。体験者の一人として、性被害について調べるうちに出会ったのがジェンダー学だ。折りしも当時は海外留学を考えていた時期。ジェンダー学に出会ったことで「ありのままの自分」を受け入れることができ、100を超えるイギリスの大学院の中から留学先を探した。

「自分の人生を変える」―。そんな一心で受験に挑み、留学の切符をつかんだ。

イギリスのサセックス大学院では「ジェンダー暴力紛争学科」という日本ではなじみの薄い学科で授業を受けた。テーマは性暴力に関する刑法から世界各地で起きている性暴力の実態までさまざま。1コマ3時間の授業のうち、2時間半はディスカッションに充てられる。慣れ親しんだ日本の学校教育と180度違う授業は、まるで地獄のような時間だった。

ときには言葉の壁にぶつかり、泣きながら教授に相談した苦い経験も。それでも、助けを求めたら、当たり前に助けてくれるクラスメイトに救われた。

ジェンダー学に向き合って1年後。性差の問題が起きた際は冷静な視点から対処できるようになった。自分でも想像していなかった心の変化。だから、ジェンダー学は私にとって自分の身を守る「盾」のようなものになった。

帰国してからはふるさと鹿児島でワークショップを開催した。2023年2月の「#鹿児島と世界のジェンダー問題」では留学先でのノウハウを生かし、県内の学生を始めとする若い世代により先進的なジェンダー学に触れてもらった。そこには、地元「鹿児島」のジェンダー問題に対する情報格差を埋めたいという思いがあった。

皆さんには「小さな夢でもやりたい!と思ったことは勇気を出して口に出してみる」ことの大切さを知ってほしい。口にすることで、時には笑われたり、批判されたりするかもしれません。しかし、必ずあなたのことを助けてくれる人、応援してくれる人は現れます。壁を乗り越えた今の私が声を大にして言いたいこと。「女性に対する暴力をなくすため、自分の人生をかけて戦い続けたい。」

 

プロフィール
東 莉子(24)
ひがし・りこ|
鹿児島県出身。高校卒業後は東京の大学で法学を学ぶ。性別を問わず、すべての人が自分らしく生きられる社会の仕組みや構造を学ぶため、イギリスのサセックス大学院でジェンダー学を専攻する。帰国後はジェンダー学をより身近に感じてもらえるよう、鹿児島でイベント「#鹿児島と世界のジェンダー問題」を開催。2024年春からは大阪の社会福祉法人に勤務する。
プチ情報

流れる水の音を聞くと、心が癒されるので、「桜島のレインボービーチ」や「入来の長野滝」がお気に入りスポット。好きな食べ物は祖母の手料理。特に鳥刺しの酢の物は自分でも真似して作れない一品。

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