鹿児島を舞台にした映画

「その一瞬を噛み締めて(仮)

「記憶」・「芒風」

現在、この映画にてプロデューサー兼女優の小川夏果さん(34)にお話を聞きました。

 

小川夏果さん(34)

熊本県出身、同志社大学法学部法律学科卒業、銀行で2年勤め女優に転身、中国電影学院へ留学。
現在はプロデューサー、女優、2022年大島紬クイーンとして活躍。
趣味:旅行、好きなもの:焼酎

 

 

『鹿児島』との縁から繋がる、今

鹿児島を舞台とする長編映画「その一瞬を噛み締めて(仮)」を制作するため、月の半分を鹿児島で過ごす。小川さんがこの映画に携わることとなったきっかけは、監督・伊地知拓郎さんからの誘いだ。かつて留学していた北京電影学院の同学生、伊地知さんは地元、鹿児島で2020年9月に作品を撮影開始予定だった。しかし5月時点、作品のキャスト・スタッフがコロナ禍により海外から呼べなくなった。そんな状態を知り、「最初はお手伝いのつもりだったんですけど、上手く乗せられて、いつの間にかプロデューサーになっていました」と振り返る。

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しかし、その思いがけない機会は小川さん自身の進路も変えた。「沢山のかごしまの人が迎えてくれたおかげで、東京にいるよりも鹿児島にいる時の自分の方が生き生きとしていることに気付いた」その出会いをきっかけに、大島紬の魅力を発信する「大島紬クイーン」のコンテストに応募。見事、2022年大島紬クイーンに選ばれた。「まだ広く知られていない大島紬の秘めたポテンシャルを世界に発信したくて、これからは大島紬というファッションにまつわる映像作品を作ろうと考えています。」

理想を追求する原動力

人にパワーを与える女優になるー。そんな強い確信から小川さんは現在、かごしまで精力的に活動している。しかし、その強い確信は当初からではなく、徐々に強くなったと話す。「幼少期から女優への憧れはあったものの、大学生時代までは目の前にあることを素直に楽しんでいました」

そんな中、第1の転機となったのが、大学1年生の初めに遭った交通事故だ。瀕死状態から回復するまでに半年間の車いす生活が続いた。そんな入院生活が続き精神的に落ち込み、PTSD(心的外傷後ストレス障害)にもなった。そんな小川さんを救ったのが当時大好きだったサッカー選手、宮本恒靖さんからの1枚のサイン色紙。「その一枚をもらった瞬間、ドキドキしたんです。これまでのつらい入院生活も忘れるくらい幸せになれました」

そこから、女優という職業を本気で目指すようになった2つ目の転機が、2年間の銀行員としての仕事だ。「銀行に入って3日で辞めたいと思いました(笑)」銀行特有のルールに縛られた仕事に追われる中で葛藤を抱える日々。そんな中、自らの”使命”を考えることが多くなり、「銀行員という仕事は私でなくても良いのではないか」、「自分にとっての幸せは何なんだろうか」という疑問を抱くようになった。事故の経験もあり、後悔のない人生を送るためには他でもない私がパワーを与える女優になるという目標を持ち始めたと話す。それから2年の銀行員としての経験を経て女優になることを決心する。

引き寄せの法則で得た未来

25歳で女優に転身した小川夏果さん。日々の仕事をこなす中で、まずは理想の女優像を見つけるために自己分析を徹底した。「自分はどんな作品が好きで向いているのか」「誰と共演して、どの監督と一緒に仕事をしたいのか」。年間500本程の映画・ドラマを見て、監督や女優の名前とその作品の感想をノートに綴る。それらを2年間、続けた。その中で得た理想の女優像をもとに自らの思いを口にする。

その思いが実を結び、東京に出てきて僅か1年で当時一番視聴率が高いと言われていたフジテレビの月9のドラマにレギュラー出演が決まる。それが、小栗旬さんや山田孝之さん、柴咲コウさんが主演の信長協奏曲だ。そこから日本の芸能界で仕事を経験していく中、次第に理想の女優像とかけ離れていく自分がいることに気付いた。

そこで、「また立ち止まって自分の人生を考えたときに、私のやるべきことはここではないなと思いました」。その時に、映像作品への教育制度が充実している中国、アメリカなどの海外で本格的に演技の勉強することを決心する。

中国での再挑戦

思い立ったが吉日。2019年8月、まず訪れた中国で友人の人脈を頼り、偶然的に演技を学べる北京電影学院への留学を誘われた。9月1日に入学する北京電影学院に誘われた日は8月20日。決断するには数日の猶予しかない。そんな中「世界の芸術大学の中で 3 本の指に入る名門大学で学べるチャンスは逃しちゃいけない」と目の前のことに夢中になった。「ニーハオ、シェイシェイしか知らない30を越えた独身女性が、何を言ってるの?」と周りは批判の嵐。

しかし、中国では倍率、数百倍の北京電影大学を始めとする演技の大学を卒業しなければ女優にはなれない。そんな狭き門をくぐることができることに価値を見出し、「日本よりも遥かに広い中国の芸能市場で自分の可能性を広げたい」と意思が曲がることはなかった。そこからの2〜3週間は移住の手続きをしながら、語学を学ぶために中国人しかいない中華屋でアルバイト。留学中は演技の勉強をすると同時に、多くの舞台に出演するなど活躍する。

なぜこれほどの努力を惜しまないのか。その答えはシンプルだ。目的があったのでつらいと思ったことは全くなかったです。つらいことはただの通過点でしかないので、その通過点をどう歩んでいくかを明確に計画していました。」。そして、COVID‐19の影響により日本に帰国。現在に至る。

先を見据えた展望

現在、制作中の長編映画「その一瞬を噛み締めて」を完成させ、日本のみならず、海外にも展開していく。これが、1年の目標だと意気込む。プロデューサーとしての仕事が小川さん自身に合っていると気付くターニングポイントとなった本作の制作によって、新たな映画の企画を進めているとのこと。

その裏側には映画を通して、「見る人を幸せにしたい」という想いとともに、「ハリウッドに通用する作品を作る」という野望も込められている。

 

小川夏果さんから大学生へ

人生は一度きり。人はいつ、どうなるか分からない。どんなチャンスが訪れるか分からない。 そのチャンスが来たときに、すぐに良いパフォーマンスができるように準備しておくこと。そして「自分はこうなりたい」という像を明確にしておくこと。 その結果、自分の好きなことでお金を稼げたらとっても幸せだと思います。

今はあんな人やこんな人と一緒に仕事したいなと思うことが多いですが、これからもっともっと自分を磨いて、逆に今度はこの人と一緒に仕事がしたいと思ってもらえるような人間になれたらいいなと思います。

 

取材後記

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。僕が小川夏果さんにお会いしたのはインターン先の研修にてでした。その時は、「小川夏果さんとこれからの進路について考える」というざっくりとした内容。しかしそんな中で"銀行員から女優への転職"、"中国への留学"など挑戦続きのお話を聞けば聞くほど、ワクワクした気持ちが溢れていました。そこで、小川さんの人生観を余すことなく鹿児島大学生にも伝えたい‼と思い記事を書くことに。取材日当日は事前に用意した質問事項にびっしりと回答してくださいました。一学生の僕に対しても真摯に向きあって、取材を快く受けてくださったこと、この場で感謝申し上げます。そしてこれからも、KADAI INFOではワクワクが止まらない鹿児島の方々にスポットを当てていきたいと思います。

デザイン:有村みはる / 編集:寝占泰志

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